近年、健康や美容への関心が高まる中で、水素水だけでなく「水素吸入療法」も注目を集めています。水素吸入療法は、専用の機器を使って水素ガスを鼻から吸入する方法で、近年の研究によってその健康効果が次々と明らかになっています。例えば、2017年に発表された慶應義塾大学の研究では、水素吸入が脳梗塞後の回復を促進する可能性があることが示されました。また、2021年の臨床試験では、水素ガス吸入がCOVID-19の後遺症軽減に有効である可能性が報告されています。本記事では、水素吸入療法の基本情報、ppm（濃度）に関する知識、健康への影響、そして今後の展望について詳しく解説します。
水素吸入療法とは？
水素吸入療法は、専用の機器を用いて水素ガスを生成し、チューブを通して鼻から吸入する療法です。従来、水素は身体にほとんど影響を与えないと考えられていましたが、2007年に水素が悪玉活性酸素（ヒドロキシラジカル）を選択的に除去する働きを持つことが発見され、以降、急速に研究が進められています。
従来の抗酸化療法（ビタミンCやグルタチオンなど）は、活性酸素の種類を区別せずに除去する特徴がありました。一方、水素は悪玉活性酸素のみを選択的に除去するため、より効果的に健康維持に寄与すると考えられています。
臨床試験と実用化
水素吸入療法は、慶應義塾大学病院などで心停止後症候群の治療に導入されており、2020年の臨床試験では、水素吸入が脳低温療法と併用された患者群において神経学的予後の改善が確認されました。また、COVID-19後遺症に関する2021年の研究では、スイソニア（suisonia）を用いた水素吸入が6分間歩行距離の増加や血流改善に寄与したことが報告されています。さらに、装置が比較的コンパクトであるため、医療現場や家庭での利用が広がりつつあります。加えて、近年ではスポーツ分野においても、水素吸入によるリカバリー促進の可能性が研究されており、持久力向上や運動後の回復速度の改善に関するデータが蓄積されつつあります。
水素吸入とppm（濃度）
ppm（parts per million）は、100万分のいくらかを示す濃度の単位で、水素吸入療法において水素ガスの濃度を表す際に使用されます。ただし、効果は必ずしも高濃度である必要はなく、水素は細胞のミトコンドリアに作用して抗酸化力や免疫力の向上を促進すると考えられています。
厚生労働省が先進医療Bとして認可した慶應義塾大学病院の臨床試験では、水素ガス発生量として「1分間に130～200ml」が基準の一つとされています。この基準は、過去の臨床試験において、心停止後症候群の患者に対して水素吸入を実施した際に、最も安全かつ効果的な水素供給量として導き出されたものです。健康維持の観点からは、1日に約700mlの水素ガス摂取が適量とされており、運動後やストレスが高い状況では1分間に130～200mlの吸入が推奨されます。また、一部の研究では、低濃度でも持続的な吸入が健康維持に寄与する可能性が示されています。
水素吸入の健康への影響
- 抗酸化作用：水素は悪玉活性酸素を除去し、細胞の酸化ストレスを軽減することで、老化や病気の予防に役立つと考えられています。
- 抗炎症作用：COVID-19の肺炎治療において、免疫暴走（サイトカインストーム）を抑える効果が認められています。
- 抗がん作用：がん治療における副作用軽減や進行抑制に寄与する可能性が示唆されています。
- 心筋梗塞・脳機能改善：心筋梗塞や虚血再灌流障害の軽減、酸化ストレスによる認知機能障害の抑制に効果があるとされています。
水素吸入療法に関する議論と今後の展望
水素吸入療法はまだ新しい治療法であり、その効果については議論が続いています。支持者は、水素の抗酸化作用や炎症抑制効果が幅広い疾患の予防や治療に役立つと主張しています。一方で、懐疑的な意見として、現時点では十分な大規模臨床試験が不足しており、プラセボ効果の可能性を排除しきれないという指摘もあります。今後の研究により、より詳細なメカニズムや最適なppm濃度、適応疾患などが明らかになることが期待されます。
まとめ
水素吸入療法は、副作用が少なく、抗酸化作用や抗炎症作用などの健康効果が期待される治療法です。ppm（濃度）は重要な指標ですが、必ずしも高濃度である必要はなく、適量の摂取がポイントとなります。今後の研究が進むことで、より幅広い疾患への応用が期待されます。
信頼できる情報源
- 慶應義塾大学病院
- ヘリックスジャパン
- 医療法人社団 永仁会
参考リンク
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